街は今日も雨さ

三連休の最終日。

浮かれ、たぎった高崎の連雀町は、赤い顔の酔っぱらいとナンパでハンパなみーちゃんとはーちゃんでごった返している。

友達がアコースティックライブをやるってんで、向かったライブハウスに、なんだか居心地が悪くなって、飲み掛けのビールをトイレに小便と一緒に流して、ひっそり抜け出した。

しばらく続いてる雨も、天気予報では明日からまた晴れるとの予報。

ついでにこの胸のもやもやも連れて行ってはくれまいかと、すがる藁もないフーテンが、しけった空に湿気ったタバコを燃やす。

男はSIONの【街は今日も雨さ】を口ずさみながら、居心地の良い方のライブハウスに向かった。

もちろん傘もないし金もない。

あるのは無限に広がる夢のガラクタと誰かを殴り飛ばしてウサでも晴らすかなっていう破滅願望のみである。

滑って転びそうな足元の悪さを、時代のせいにして一歩一歩転ばないように。

たどり着いた居心地の良いライブハウス。

いざ。

しかし、入口の鍵が空いてない。

踏んだり蹴ったりだ。

明かりはついているのに。

人の気配もあるのに。

透明人間でも、これほどの仕打ちを受ければ次につながる何かをするはずだ。

街は今日も雨さ。

ずぶ濡れの心の向こうに。

標識が霞んで見える。

街は今日も雨さ。

 

捨ててあった傘。

拾ってさした。

骨が折れていてかたちんばに広がる。

 

良いじゃないの。

 

酔っ払った独りの男は、傘も刺さずに、アスファルトにうつ雨の音で、鼻歌を口ずさんでいた。

 

駄文

たったの10,000円のために。

強盗殺人を犯す夢を見た。

ハングリーとアングリーを掛け違え続けた生活も約三年も続ければ、価値観もバグり、それに伴い生活もバグり、友人関係、地位、人間性もバグっていき。

よくまあここまで自分の首を絞め続けたなと我ながら感心。

俺は今どんな足で歩いているのだろう。

どんな歩幅で歩いているのだろう。

むしろ歩けているのだろうか。

前に進んでいると思っていたのに、ただ足踏みをしていただけじゃないのか。

信号が赤に変わる前に、この交差点を渡れたら、明日はいいことがある。

そんな願掛けも最後のタバコのひと吸いと共に、冬の夜空に火花散らして消えてしまった。

さあて、面白くなってきた。

ギアは噛み合わない、クラッチも滑りっぱなし。

ただ、奇跡的にタイヤは四つ付いている。

あとは、ステアリングをしっかり握り込むための、この手にリキを入れるだけだ。

男ジュンペイ。

これにて、掛け違え、履き違いの人生は終わりとする。

 

ニセモノだらけ

ニセモノだらけ。

アイツもコイツもソイツもドイツもあの子も。

だけどたった一つだけホンモノ。

自分だけは偽っちゃいけない。

ニセモノもホンモノもミキワメる力が欲しいだけ。

時々どうしようもないくらい。

アイラブユーって思うんだ。

未来だけはきっと素敵だろう。

死してなお

年も暮れ。

今年もたくさんの著名人が亡くなった。

近しい人間も然り。

オレの中で、ずっと伝説だったロックスターがが逝ってしまった。

別に死んじまったらそれまでなんだけれど。

やはりとても悲しい。

TwitterInstagram、その他SNSではたくさんのお悔やみ文句があげられていた。

オレはそれがなんか嫌だった。

オレとまっすぐ物議かませる仲間達は決してその名前をSNSにはあげなかった。

誰よりも悲しいはずなのに。

みんな心のどっかで思ってるんだと思う。

別に呟く程の事ではない。

だって、誰よりも自分が1番悲しいと思っているんだもの。

呟く程の事ではない。

タバコと人間の価値は灰にならなきゃわからない。

そんなものじゃない。

そんなものじゃない。

けどやっぱり悲しいから、彼が残したロックンロールを、未来永劫、ひっそり聴き続ける事にするよ。

R.I.P.

忘れてしまおうと思ってたけど。

爪痕、消えなくて、消えなくて。

世迷言も広がれば伝説

「えー、それきっと悪魔だよ」

18の時バンドやってたメンバーのママが、メンバーの家でメンバーと酒飲みながら話してくれた奇妙な昔話。

人はどこかで何かしらの形で悪魔と何かしらの契約をしているらしい。

契約の代償は大小あれど、基本的には寿命だったり、ソイツの生に対するエネルギーだったり渇望する物へのエネルギーだったり。

どこでどんなタイミングで現れるかわからない、けど奇妙に、記憶にやけに残るタイミングでやってくるらしい。

オレも例外ではなく。

冒頭の「」にもだろう。

この日は確か当時のバンドメンバーの家で曲を作ってたんだと思う、ライブもすげえ本数やっててイライラしながらメンバーの家で曲作ってたんだと思うよ。

気分転換するべってうちのリーダーが言って、みんなでタバコ吸いにそいつの家の居間に行ったんだ。

そしたらそいつのママが晩酌してて、まあ当然のようにオレ達も混ざることになって。

「何日も止めてもらってすいませんね、あ、そういえばこんな夢見たんですよ」

ってんでほんとに酒の肴程度の話をしようと思って話し始めたんだと思う。

これはあくまでも今現在鮮明に覚えてる当時見た夢の内容を書き綴ってるだけにすぎない。

舞台はどこだかわからないんだけど、とりあえず大きな都市の大きな交差点、西武新宿駅前の交差点みたいな雰囲気だったかな。

そこでメンバーと2人で歩いてたんだ、そしたら向こうから2メートル近い足の長い初老のお爺さんが歩いてきてすれ違った。

「靴紐が解けているよ」

そのおじさんはオレとメンバーとすれ違うや否や近所の子供に話しかけるくらいなテンションで優しく話しかけてきた。

確かオレだったかな、履いてたブーツの靴紐が解けてて、ありがと!とかって言いながら靴紐結んだんだよね。

そしたらそのおじさんが指を刺し始めたんだ、オレ、バンドメンバー、オレ、バンドメンバー…

何回か往復してオレを指差したんだ、でも「うん、違うな」って言ったんだ。

そして最終的に被ってた帽子を当時のリーダーに被せたんだ。

リーダーは「いらないよ」って言ったんだけどおじさんは「持っておいたほうがいい、もし君が望むのなら」って言って無理やり被せたんだよね。

もちろんその間人の往来は激しい交差点のど真ん中、オレとリーダーの2人とおじさんの周りだけずっとスローモーションで不思議な空間だったの覚えてる。

「もういきなさい」って言っておじさんは結構乱暴にオレとリーダーの肩を突っぱねたんだ。

「もう会わないほうがいい、いい人生になるといいね」って言っておじさんは滑るように人混みに消えていった。

そして交差点渡り切ったあたりでリーダーが「被ってきたくらいしっくりくるんだけど、この帽子」って言ってたの覚えてる。

そのあとはたぶん目が覚めてその前後の事はもう覚えてないんだけど、妙に不思議な夢だったなって思ってその夜にメンバーのママに話したんだ、そしたら冒頭の「」ってね。

別にそれがなんだってわけじゃないしオレもリーダーも今だに生きててバンドやってるし、お互い泣かず飛ばずで必死こいて自分の嘘を本当にしようと日々もがいてるわけだし。

もし仮に夢に出てきたおじさんが悪魔だとしたらオレは何を捧げたのか、むしろ否定されてオレは悪魔にすら選ばれなかったのか。

そして仮に悪魔に選ばれたリーダーは27の時になにを失うのか、はたまた27でうんぬんかんぬんっていう噂は本当に噂でしかなかったのか。

信じちゃいない、けど否定しているわけでもない。

そういうジンクスは好きだからね。

さっき一緒に飲んでた友達が「妙な経験をした一日だった」ってんで話してくれて、この話し思い出したから書き綴ってみた。

27で死ぬだなんだってのは、ただのヤク中の世迷言でしかないんだと思う。

オレにとっての悪魔なんてのは、いちいちオレの人生に登場して掻き乱していくいい女達だけで充分だ、アクセサリーは間に合ってるよ。

 

さて、最近めっきり寒くなったね。

一人暮らしを始めて、最初の冬。

シングルベッドは今日も悪魔を受け入れる準備をしてあっためておくよ。

ありきたり

「幸せ、うん、僕は幸せなんだけどなんかバカになった気分だよ」

「最高にクールだけど貴方にないのはモラルだけよ」

「お互い様じゃないか、君だって獣みたいな声で愛してる、なんて」

「本当にバカになったようね、ねえ、ところで貴方の名前は?」

「僕の名前?ありきたりだよ、とってもありきたり、君は?」

「お互いにキスはしたじゃないの、ありきたりよ、ありきたりな名前」

「そっか、じゃあありきたりさん、今日は君のママが帰ってくる日だろう?心配させるといけない、送っていくよ」

「いいの、今日はママだけだから、だからお願い、時計も外して、ね」

「顔はいいのに頭は悪いのか、そっかしょうがない、でも時計は外せない、縛られていたいんだ」

「貴方は黙ってる方がかっこいいわ」

「君は黙ってる方がかわいいね」

「ありきたりよ、リズムも感覚も、ありきたりよ」

「ありきたりだね、とってもありきたり」