ここ数日の記憶が途切れ途切れで、曖昧な記憶達を手繰り寄せるように思い出して脳味噌のパズルをなんとか完成させてる。
いよいよどん詰まりだと思えば誰かが手を差し伸べてくれる。
差し伸べられた手に縋る思いでぶら下がって、フワフワとバタ脚を繰り返す足は常に空回り。
お前はまだやれる、やれると首根っこを掴んでは荒廃農地に放り投げられるような気分だ。
孤独を受け入れるのも人間の本質であり改めて自分という生き物を客観視できる貴重なタイミングではあるが、それの行き着く先は考え過ぎの泥の沼だ。
ズブズブと浸かっていく。
腰まで浸かったあたりで「ここじゃなかった」と気づいた時には既に手遅れ、軌道修正もままならないままバカになった感受性を必死にニュートラルに戻すような作業の繰り返し。
たまんないぜ。
いよいよなんとかしねえとまずいなと思い、全てのモチベーションが空っぽになった脳みそと心をなんとか直結させて、ソファーから立ち上がってみる。
立ちくらみと気怠さに押しつぶされながら、なんとか玄関にたどり着くことはできた。
玄関の姿見を見て、蹴りでもいれたら自分自身が変わるのだろうか、それともそのままバラバラに崩れて取り返しのつかない形で再構築されるのか。
くだらねえって思う自分と、それもそれだなと思う自分が、同時に語りかけてきた気がする。
夕暮れ時のこの季節の空の色が好きだ。
乾き過ぎず、濡れ過ぎず。
クシャクシャになったタバコを、ぐしゃぐしゃの髪の毛をかきむしりながら咥える。
鼻の奥に登ってくるこの匂いは、いつもリアルで、依存性の賜物だと感謝を告げてゆっくりと煙を燻らす。
特にどこに行きたいわけでもない、行かなければ行けないわけでもない、けれどもここにはいたくない。
乗り込んだ車の運転席に立ち込める、連日吸ったタバコの残り香に思わず眉を顰めながら、勢いよく車のエンジンを回す。
元気よく起こされた俺の愛車は、細かい振動をハンドルに伝え、俺に始動を教えてくれた。
「ポーン」
親の声より聴いた機械音が俺のこめかみにぶっ刺さる。
聞き覚えのあるこの音に、また嫌気が悪意を持って俺の上を通過していく。
燃料残数が限りなく[E]の真上を刺そうとしている、ガソリンが残り僅かだった。
脳みそも、心も、おまけに車も、どうやら燃料切れのようだ。
「お前もかよ…」
そりゃそうだ、人も車も、燃料がなきゃ走れねえよな。
よしわかった、お前の燃料は俺が入れてやるよ、だから、俺の燃料が入れられる場所までは、お前が連れてってくれよ。
ここじゃなければ、どこでもいいからさ。