「おいおい、頭も悪けりゃ口も悪いと来たか」
勘弁してくれよ、とアイツは項垂れながらそう言った。
「だーあ、うるせえんだよこのタコ」
持っていた中ジョッキが思わず手から滑り落ちそうになり、俺は慌てて口に運んだ。
口と脳みそがアルコールに支配され始め、少しづつ本心というコアが顔を出し始めている2人の会話は、とても5年ぶりの再会とは思えないほど、饒舌に端的に近況報告をしている。
「まー、結局のところ」アイツは口を開いた。
「お前はどこに行っても何しても変わんねえよ、孤独だー、独りぼっちなんだーなんて嘆いてるフリしてりゃ、自然と周りに人が寄ってくる、そういう男なんだよ、お前は」
山芋を箸でブスリと刺して、アイツは俺を指差す。
「そんな赤い顔して箸で人を指差すもんじゃねえ、箸はこう使うんだバカヤロウ」
俺はそう言いながらマグロをつまむ。
走馬灯のような、はたまたテレビの生放送のような、妙にリアルで妙に他人事のような思い出が、食べ過ぎた唐揚げの胸焼けと一緒に込み上げてきた。
あー、早くタバコ吸いたい。
久しぶりに会う仲なのに、もっとこう、まともな話はできなかったのだろうか。
高崎着を告げる車内アナウンスが流れ、俺は席を立ちながらぼんやりとそんな事を考えていた。
「どこ行っても孤独、ね、どこにいても手放せねえ性分だもんで」
雨が上がったアスファルトは薄っすらと月明かりが反射していて、季節外れのイルミネーションを彩っている。
「どこでもいいよ、ま、行こうか」
プシュッ。
どこにいても、缶のハイボールは美味いんだから。